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小児歯科における押さえつけやネットによる固定に関して

目次

医療行為とは

基本的に医療行為は他人を傷つける行為です。薬にしてもある意味毒です。

キツイ言い方をすれば傷害罪になります。

医療行為として行う場合は、正当な処置となります。

そのためにインフォームドコンセントとなり、説明をして同意をして処置が出来るのです。

それでは低年齢の子どものケースで考えてみましょう。

嫌がっていると言うことは同意をしているわけではありません。なので、回答は、本人が同意するようになったら来てくださいが回答です。

それで、ご両親は納得しますか?なんとかして処置を希望しませんか?それとも、医科や歯科医院で存在しない神の手を期待していますか?

それであれば、その先生にお祈りしてもらうのも手かもしれません。現代医療においてそのような行為で治療が完了するとも思えませんが。

過去の事例

年度は忘れましたが、確か2000年くらいに札幌で起きた、医科での裁判事例です。年齢は確か16歳くらいだったような気がしますが、障害を持ったお子さんで、手術をするのを拒否しました。

両親は手術をする事を強く希望して、結果的に手術を行いました。

その子は、病院を訴えました。裁判結果は、病院側の敗訴です。

これは医療界に大きな衝撃を与えました。

その後、本人の同意なしに治療は行えなくなりました。

ここで問題があります。低年齢児は当然、社会への適応が出来にくいので、子どもの治療はしなくて良いと言うことに捉えることが出来ます。

それは親権で親の権利で治療をさせると考える人もいます。

今回の札幌の裁判事例も未成年です。親権を使って手術しました。結果、違法行為で傷害罪です。

この裁判の特徴としては、本人が意思疎通の出来る年齢である点です。

その意思が、国として認められる年齢かどうか言うことが焦点になります。

その年齢の基準はいつかというと、遺言書の書ける年齢が、国が公式文章として認められる年齢です。それが12歳です。

つまり親権を使って、親が行える権利は、11歳までとなります。

どこの病院も、現在は12歳以上に関しては本人が拒否した場合は、強制治療が出来ないのです。

11歳未満なら何をしても良いのか?

答えはNOです。これは厚生労働省が身体拘束の三原則を提示しています。子どもが自分の言うことを聞かなかったからと言う理由で、部屋に閉じ込めたり、身体を拘束することは認められません。

厚生労働省の身体拘束の三原則

  • 切迫性:本人または他者の生命または身体が危険にさらされる可能性が著しく高い場合
  • 非代替性:身体拘束以外に代替する方法がないこと
  • 一時性:身体拘束は一時的なものであること

となっています。

小児歯科学会のおける身体拘束の考え方

厚生労働省の示す一般医療・介護現場での身体拘束は、医療や介護の現場では援助技術のひとつとし て安全を確保する観点からやむを得ないものとして行われてきた経緯がある。身体拘束は原則として虐 待に該当する行為と考えられるが、本人の生命または身体が危険にさらされる場合など、「身体拘束の 手引き」(厚生労働省 身体拘束ゼロ作戦推進会議編)が定める「緊急やむを得ない場合」とされて いるものについては該当しない。

そこで、当学会において身体抑制の対象とする患者について以下のように定める。

  1. 低年齢または何らかの障害等で身体拘束が歯科治療上の安全を確保するために必要であると認められること
  2. 身体抑制の必要性ついて、歯科医師および歯科衛生士等複数の者が認めること
  3. 身体抑制の方法や時間などを患者本人または保護者にわかりやすく説明し、了解を得ること
  4. 抑制中に術者以外に安全を見守る者を置くこと

これらの用件を満たした患者を身体抑制下で診療する対象患者とする。 なお、身体抑制には、レストレーナー®(身体抑制網)やタオル、抑制ベルト、術者や補助者による徒手抑制がある。

身体抑制下に歯科治療を行う手順

  1. 抑制具(レストレーナー®やタオル等)を使用する必要性を担当医およびその他1名以上の歯科医師 または歯科衛生士等複数の医療従事者が認める。
  2. 軽度な徒手抑制下で行う治療は、口頭で抑制の保護者の承諾を得る。
  3. 抑制具による抑制下で治療を行う場合には、患者または保護者の承諾を得た上、承諾書に署名を必要とする。なお、承諾書を得る際には、必ず抑制の方法、時間、術前術後の対応方法について説明を行う。
  4. 抑制具で抑制する際には、術者だけでなく必ず補助者の歯科医師または歯科衛生士が介助を行い、さらに生体モニター(心拍数、SpO2:血中酸素飽和度の把握するため)、を装着して患者の安全を見守る。
  5. 身体抑制下での歯科治療後に、術前・術中・術後の状態についてカルテに記載する。

 虫歯治療が、緊急性に当たるかどうか?

虫歯の大きさにもよると思います。

点みたいな虫歯は、生命の危険に脅かされているとは考えられません。だけども、大きくなり神経まで達する可能性のある物は、痛みや、膿による感染症を引き起こし、さらには、歯槽骨炎、顎骨炎と発展するケースあります。

このことを考えると歯と歯の間の虫歯や、神経まで到達している虫歯に関しては、緊急性がある処置に当たる可能性が高いと考えられます。

ちなみ私が診療するときは上記の内容は全て守っています。一番怖いのは、小児歯科学会のこのような指針を知らないで処置す事が問題であって、押さえつけたり、ネットを使うことが問題なのではありません。

押さえつけ以外のその他の方法は?

あります。

前進麻酔科下での処置です。これは主に大きな病院や、麻酔科医がいる病院で処置が可能です。

しかし正当な理由がないと保険適応外となります。麻酔自体が保険適応外ですから、それ以降の処置も保険がききません。

それと毎回全身麻酔をかけるわけには行きませんので、神経まで到達した歯は抜歯の可能性が高くなります。

私自身も全身麻酔下での処置は複数行ってきましたが、全身麻酔終了後、高頻度で発熱します。処置時間を短くしても同じでした。

実際に大学病院で全身麻酔を希望しても、行ってくれる可能性は非常に低いです。

歯科治療のトレーニングは?

通常に治療で軽度のイヤイヤであれば、ありだと思います。しかしそのようなお子さんは、強制治療の対象とはなっていません。

確かに厳しいとトレーニング手法はあります。

例えば、ハンドオーバーマウス法やタイムアウト法などもあります。

いまだに小児歯科の教科書に載っています。確かに効果は良いと思います。

しかしこの方法は、虐待とされています。なぜなら拷問を続けているのと同じなので、暴力に近いか形で、相手に言うことを聞かせようとしているのと同じだからです。

さらに言うと、虫歯は待ってくれません。様子を見ても良い程度の虫歯であれば、進行止めで十分です。

各章で治療の考え方を記載していますが、それぞれの先生、人には色々な考え方があります。そのなかで、何がベストな選択肢なのか、担当の先生と相談してください。

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この記事を書いた人

歯科大学卒業後、小児歯科を専攻として大学院を卒業し博士(歯学)号を取得。大学の小児歯科教室で教員を務めた後、地元で小児歯科を専門として開業しつつ、大学の非常勤講師(小児歯科)に任命中。小児歯科学会の認定医、専門医試験に合格して現在は専門医の資格を所有。小児歯科を専門とした歯科医師です。

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