[レポート]心疾患を有する小児に対する歯科治療

心疾患を有する小児に対する歯科治療

令和3年1月24日にライブ配信された日本小児歯科学会オンラインシンポジウム「心疾患を有する小児に対する歯科治療」のレポート内容になります。心疾患に関する内容は2017年改訂版を元にされています。

1)コーディネーター
大阪大学大学院歯学研究科小児歯科学教室 教授 仲野和彦 先生


「感染性心内膜炎の予防と治療に関するガイドライン」をベースに考える

100人に1人は心疾患を持って生まれてきますので、日常臨床で心疾患を有する小児の歯科治療を行う機会に遭遇することは多いのではないでしょうか。本セミナーでは、日本循環器学会より発出されている「感染性心内膜炎の予防と治療に関するガイドライン」をベースに、感染性心内膜炎の予防に関して熟知されている3名の先生方に、それぞれの立場からご講演いただきます。本セミナーが、心疾患を有する小児への対応に関して、小児歯科関係者として理解しておくべき知識を改めて整理する機会にしていただければと思います。

2)循環器内科医の立場から
大原貴裕 先生(東北医科薬科大学地域医療学教室 准教授)

感染性心内膜炎(IE)のリスク群
海外のデータでは10万人あたり1000人?くらいと言われており弁膜症まで入れると10倍くらい増える。
1997年では抗生剤は必要となっていたが2007年では必要ないと記載されるようになってきた。
歯科治療より、歯ブラシなど食事の方がリスクが高いため、治療での予防は副作用を考えると必要ないのではないのか?むしろ口腔内状態を清潔にする方が有効ではないのでは?と言う所から来ている。
IEの統計は高年齢が多く若い人でのデータが少ない。
2010年のガイドラインでは、中高度リスクの予防投薬は必要は無いとなっているが、日本では投薬が行われており、IEの発生は押さえられてきたという歴史がある。
AHA-GL変更後も予防投与は行われてきた。小児の場合は成人によりも歯科治療の割合が多くなり、トラブルがあればその影響は長くつづく。
英国では、ガイドライン変更後に一気に投薬量が減ってきた。素に伴いリスク群でIEが増えている現状が出てきた。
英国
AMPC(アンモキシリン)3g投与で致死率は0であった。
高度、中等度リスクで予防投薬で十分予防が可能。
ガイドライン後もリスクは変わっていないとされているが、実際は投薬されており、投薬は一斉に中止されていない。
心臓ディバイスでIEを発症した場合は、ディバイス自体を交換しなくてはならず薬剤だけでは対応できない
口腔内の菌からIEを発症するリスクの報告がある。
質問1
予防投与は一まで行えば良いのか?年に一度病院に通っているのだが。
一度予防投与が行われていれば、その後も予防投与は必要。
手術して人工弁、残遺病変「雑音あり」などは高度リスク
残遺病変無しは低リスク
心室中隔欠損(VSD)
自然閉鎖があり2歳までに自然閉鎖
2歳までに「雑音無し」は低リスク。その後に雑音が残っている場合は中等度リスク。
心房中隔欠損(AD)
経過観察・手術は低リスク。
川崎病
バイパス手術のみは低リスク
歯科での予防投与は
アンモキシリン
2g(50mg/kg)(最大)
細菌が血中に乗って心臓に付着した場合は6-9時間後に再増殖をするため内服9時間後に有効な血中濃度をあげるため、6時間後に再投与が必要な場合がある。

3)大学病院小児歯科医の立場から
野村良太 先生(大阪大学大学院歯学研究科小児歯科学教室 准教授)

口腔細菌と全身疾患
新生児100人に1人が1人が先天性心内膜炎
小児全体で0.3-0.6/10万人
先天性疾患を有する小児41/10万人
日本のガイドライン(JCS2017)が最新歯科に関する記載はP51-56 P65-67の9ページに記載されている
菌血症を起こす高い処置は抗生剤が必要
抜歯
口腔外科処置
インプラント
スケーリング
感染根幹処置
歯の再植
低いリスクは必修ではない
充填や修復
デンタル撮影
印象
抜随
矯正処置
局所麻酔(感染のない歯肉)
咬合誘導
露随する危険性がある場合は抗菌薬は必要ないが、臼乳歯で一部が感染している可能性がある場合は抗菌剤が必要
アモキシリンを調薬で1-2時間が血中濃度が最大となる
初回に減量するケース(出せないなども含めて)
30mg/kg投薬して
5-6時間後に500mgを追加投与する
これは細菌の再増殖が6-9時間で増殖するためこれを防ぐ目的
薬の条件
1:原因菌である口腔連鎖球菌を減少させる
2:短時間での血中濃度の上昇
3:6-9時間維持
サワシリンは全て条件クリアー
ケフラール 2だけクリアー
メイアクト 1だけクリアー
他の代用薬として
クリンダマイシン 50mg/kg
アジスロマイシン 15mg/kg
クラリスロマイシン 15mg/kg
錠剤が無理な場合は別の薬剤で対応なケースがあるその場合は処置前30分前に行う
万一に備えての予防投薬は有効
口腔ケアは最大の用棒対策である。
JCS2017より抗菌薬の予防投与より口腔ケアの方が重要
歯科での流れ
患者来院
循環器の主治医にたいして、抗菌薬の必要性、その他注意する点を問い合わせる
自院で処置が可能か?麻酔管理棟は必要ないか?必要なら大学病院紹介という形になる
追加内容
投薬は1回投与が理想。2回投与では、2日目をちゃんと飲んだか確認のしようがない

4)こども病院小児歯科医の立場から
柳田憲一 先生(福岡市立こども病院小児歯科 科長)

歯科治療で注意が必要なこと
感染性心内膜炎(IE)予防
チアノーゼ
心不全
凝固剤の服用
不整脈
ペースメーカー
予防の要点
1)保護者から情報を集める
2)主治医から情報を集める
予防の必要性
心臓の状態 経過は良好か 術後あるいはオペの計画はあるか
一緒に吹くよう、チアノーゼ(泣かせても大丈夫か)、心不全、局所麻酔に関して。必ず局所麻酔は聞く。歯科では量が少ないため大半は問題ないと言われる
ワーファリンなどの凝固剤の使用
3)歯科処置での感染リスクを考える
基本は侵襲性(出血)
抜歯
スケーリング
ラバーダム(ガイドラインでは必要ないとされているが、小児の場合は考慮しなくていけないため予防した方が良いケースが多い)
乳歯の自然脱落(交換期)(基本は必要ない。抜いた方が良いか、自然脱落がいいのかという考えでは、循環器の先生の立場から考えると自然脱落が感染リスクが低いが、気になって触っているとかの場合は感染リスクが高いため、抗生剤投与をして抜いた方が良い場合がある)
抜糸
外傷による口唇、歯肉からの出血
乳歯の抜随処置
処置歯が感染源となることがあるので、抜随でも予防投与が必要となる
先生の所ではリスクを考え抜随は行わず抜歯を行うケースが多い。(安全を考慮して)
4)抗生剤の投与
1時間前に一気に飲むよう指導。量が多いので吐き出す子もいる、目を離さないように注意する。(服薬がちゃんとできたか)
飲み終えた時間を覚えておく。
5)その他
処置の前には口腔内の清掃に注意する
治療回数を減らす(ブロック治療をする)
治療後は厚熱や体調注意がおきないか注意喚起する
治療に当たっては
パルスオキシメーター
酸素
は準備する
より慎重な対応が必要なケース
チアノーゼ
心不全
不整脈
ペースメーカー
できるだけ早い段階での口腔内の管理が重要
医療連携の重要性
メッセージ
歯科治療の機会を減らし、健康な口腔環境を維持する小児歯科医療そのものが最大の心内膜炎予防です。
座長より
ガイドラインは大まか永久歯の内容で乳歯のガイドラインは混乱を来すため記載されていない。次回のガイドラインの変更では乳歯に関して入れるかどうかを検討したい
5)質疑応答
 「心疾患を有する小児に対する歯科治療」や「感染性心内膜炎の予防と治療に関するガイドライン」などに関してご質問がありましたら、事前に以下までメールでお寄せください。当日にまとめてお答えいたします。
外傷の時の投薬は?術後になるけど
少し切る程度であれば、抗生剤の投与は必要ないが、処置をするような外傷の場合、投与が必要で状態によて術後も必要。ケースバイケース担ってしまい、必要なら主治医と連携。特にワーファリンを使用してる場合は止血に時間がかかる。
医科でガイドラインとは違う処方されるが、医科での解釈が異なるのか?
医科の処方本には、ガイドラインのことは記載されていないため、そのためにおきる問題点である。
薬局から問い合わせがあると、医科からいつも通りで言われてしまうことがあるのでそれに伴う問題だと思われる
乳歯では抜随の歯髄炎と感染根幹処置はX線では判断できない可能性や、進行状態によっては感染根管に移行する場合があり鑑別がこんな場合はどうしたら良いか?
感染根管として扱い投薬を行う
自宅での自然脱落は投薬は必要ないか?
ガイドライン通り、基本自然脱落は必要ないが、外傷や自分で引っ張って抜いた場合は、抗生剤を考慮する必要がある。
    本シンポジウムは、2020年12月24日の日本循環器学会の情報に基づいております。「感染性心内膜炎の予防と治療に関するガイドライン」の最新情報は https://www.j-circ.or.jp/guideline/guideline-series/ をご確認下さい。

 感想

 今まで、多くの心疾患を抱えた歯科治療を私自身は行ってきたが、抗生剤の2回投与の方法はしらなかった。すごく勉強になりました。この方法は、一度に多くの抗生剤を飲めない子どもには有効かもしれないが、2回目を必ず飲んだかは確認のしようがないため、1回方が確実で有効で有る事が理解できた。
 厚生労働省は歯科と医科の連携を重要視し保険点数にも反映されているが、医科に照会状を書いても十分な理解が得られないのも実情である。
 例を上げるなら、川崎病の患児で心臓病の状態の有無の確認の手紙を書いても、川崎病が全て心疾患を有しているわけではないから、川崎病で照会しなくて良いという連絡がくる。
 さらにひどい医科の先生になると、歯科に心臓病の話をすると診てもらえなくなるから、心臓病のことは伝えないようにと口止めする先生も経験した。
 一方、前投薬の処方をお願いすると、レセプト(保険請求)が汚くなるから処方しない!と言う連絡も来た。
 心疾患でのIE予防対策として術前投与は有効だが、私の調べて範囲(詳細まで調べた物ではないが)では、予防と薬は保険として認められたいないらしい。
 予防投薬を行うには自費で術前投薬の必要があり、当然それ以降の処置も自費になる。
 しかし大半の医科の先生は術前投薬は有効と理解しているため、先生の指示の元の使用という内容で処方してくれる。だけども利害を追求すると前期のような処方を拒否するのも理解できる。(人道上に問題があると思うが)
 私自身も、術前投与が保険の対象外と知らずに処方して、レセプトの特記欄に心臓病の術前投与と記載した事があった。実際にはそのレセプトは返戻とならずに通った。
 本来ではダメなレセプトとなるのだが、レセプトを審査する先生も理解して見て見ぬふりをしてくれたのだと思う。(実は保険状問題なかった?私の勉強不足なだけで)
 当然投薬量を最小限に減らすために、処置による来院数を極力減らす方向が理想であるのも事実で、小児歯科特有の方法のブロック治療は非常に有効な手段で有る事を再認識した。
 今回学んだ知識を更に生かして診療に取り組んでいきたい。
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