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[講習会]「口腔の形態と機能発達から見た食育」の受講

目次

講演のまとめ

  • 摂取食品数は1歳7か月までは急速に増加し、それ移行はゆるやかとなった
  • いつ何を与えるのかでなく、いつまでに何を食べれるようになったよいか(食べられるように練習する)という新たな視点を与えることが重要。
  • 第1子群は第2子以降群よりも摂取品目が少なく、「しゃぶって遊ぶ」食品数が少なく、「まだあげていない」食品数が少なかった。
  • 3歳半で平均的に食べられうようになるには離乳開始から1歳7か月までが重要な時期である。

講師の先生の抄録(一部変更ならびに略)

子どもたちの口に関しては、高度経済成長期においてはう蝕が最大の問題でした。

ところがその後半世紀の間に、子どもたちの口の問題は顎の発育不全や歯並びなどの形態、そして咀嚼、嚥下、発音、呼吸、頭位(姿勢)などの機能に関するものにシフトしてきました。

健常児として産まれた子どもたちに、成長発育の過程で咀嚼器官の発育不全が生じていると言ってもおかしくない状況にあります。

子どもの咀嚼器官は哺乳期、離乳期を通して発達していきますが、離乳期以降の食生活は栄養素、カロリー、消化効率が重視され、さらにライフスタイルの変化から簡便さがより追及された結果、グローバルで季節感が無く噛み応えのない加工食品で溢れてしまいました。

子どもの口の発達を促す食の文化が根本から揺らぎつつあるのが日本の現状であり、その問題に最も直面しているのが保育の現場です。

家庭で十分とは言えない食事や食の躾のフォローのみならず、孤独な環境で初めて子育てをする母親へ子育てそのものの支援も担っているのが保育の現場という現状があります。
今回は、県内における保育の現場で得られた噛めない子に関するデータをもとに食べられない子どもたちの現状を解説し、また7か月から3歳児までの乳幼児健診において得られたデータをもとに、3歳で平均的な食品を食べられる子どもたちが、7か月以降どのように食品を摂取していたかを解説し、エビデンスに基づいた乳幼児の食支援についてお話させていただきたいと思います。

講演内容

○噛めない子の文言に

「離乳食はきちんと段階を追って硬さを上げていかなくてはならない。硬さの進め方を急ぎすぎると噛まずにまるのみするようになって噛めない子になる。」
と記載されていることがおおいい。

この根拠となるなる論文はいくつか存在します。

その指標の硬さの指標の分類では
①ポタージュ状のドロドロ状態
②プリンやマッシュ上のな舌で潰せる硬さ
③全粥など歯茎でつぶせる硬さ
④成人食に近い硬さ
となっている。

例えば大根をおでんみたいに煮込んだものや、煮込みハンバーグを細かくカットしたものだと、どの分類になるだろう?

食事の硬さが大人と同じになった時期が早すぎる場合には咀嚼の発達阻害要因にるのでは?と思われるが、3歳児に両者の有意な相関が認められたのみで、離乳後期までに大人と同じ最早期群の方が良かったという報告も見受けられた。

○最近の潮流

上下の乳歯の奥歯が生え揃う前に硬いものを与えると、噛まない、まるのみをする、硬いものがきらい、偏食がある、などの子に育つことがある。

幼児食は奥歯の生え方を見ながら進める。奥歯が揃うまでは形があるが柔らかい食品を食べさせる。

上下の1本目の奥歯が生え揃ったら噛み潰しが出来るようになるので、それほど硬くない食品、例えば卵焼き、コロッケなどが食べられる。

○日本の食事の変化

家庭料理が大きく変化している。

昔の家庭料理は
①地域の食材
②四季折々の食材
③自分で調理
④家庭に伝わるメニュー
⑤線維性の食品
があげられる。

つい最近多くなっている家庭料理は
①グローバルな食材
②季節感のない食材
③半調理済みの食品
④ファミレスメニュー
⑤非線維性の食品

昔は、食事中に飲みのを飲む行為は下品とされていて、味噌汁でも具が多く入った、味噌汁が定番であったが、講師の矯正の先生のところに来院される方の食事中に飲み物を90%以上の方が飲んでいる結果がでている。

離乳食でお粥をたべていても、喉につっかえては大変とお粥にベビー麦茶の組み合わせも珍しくない。

学校給食でも食べ残し食品でもお浸しや、お吸い物などが大きな割合を示している。
わりかし食べるパンでも、ココア揚げパンなどは残食が少ないが、食パンは残食が増えてきている。

これは食パンはマーガリンやジャムがなくなると味がなくなることが関与している可能性が高い。パンの小麦の甘さを感じ取れにくい状況になっている可能性が考えられる。

ある地域での炊き込みご飯の残食率が50%以上になった事件が発生する現状である。

○現代っ子のお口の特徴

  1. 虫歯の減少
  2. 歯肉炎の増加(自浄作用の低下)
  3. 不正咬合の増加
  4. 噛めない子、飲み込めない子の増加
  5. 顎関節症の低年齢化と増加

日本大学松戸歯学部矯正科の教授が論文を発表しており、顎の成長に伴う形態と歯の放出方向の違いなどが上げられている。

正面から見た顔貌だと現代人は唇から顎の先までが長くなっているのも特徴的な顔貌で顎の関節からエラまでの距離も短くなっているのも特徴である。

食事そのもの弥生時代と比較して現代人は
食事時間
51分→11分
噛む回数
3,990回→620回
と変化している。

○口が健康である

虫歯がない。歯肉炎がないだけが、歯科で言う口が健康といういみであろうか?

口本来の目的が達成されていることが口が健康であると言う意味ではないのか?

  • 噛むこと(咀嚼)ができる
  • 飲み込むこと(嚥下)ができる
  • 味合うこと(味覚)ができる
  • 正しく発音することができる
  • 自信を持って笑顔でコミュニケーション出来る

かつて日本の各地にあった歯固め

  • スルメ
  • 星昆布
  • さとうきび
  • ゆでダコの足1本
  • 鮭などの燻製
  • きゅうり
  • にんじん
  • セロリ
  • サクサクした果物はガーゼに包んで
注意

上記記載の内容はインターネットを見てただ単にマニュアルとして導入する方は注意が必要です。

知識がない状態で使用すると、誤飲誤嚥のおそれがあります。

最近では安全性を考慮された、シリコン製の歯固めも存在します。(ただし本来の歯固めの機能取得は難しいと思われます。)

これらは与えればいいものではありません。

歯固めの意味を考えると、奥の歯肉や舌などいろいろな器官を使用、学習するものです。

これらの食材で食事をすることが目的ではありません。

舌を使った味の染み込みや、食べ物を削り取るのが楽しいのです。

逆に折れてしまった食材は、その食材を食べようとはせずに、歯固めの食材を続けて削り取ろうとします。

そうすると口の中にはい大きな破片や、複数の破片が残った状態になります。

これが誤嚥や誤飲に繋がります。

与えたらほっとく物ではなく注意い深く確認してあげる必要があります。

口に残ったものは取り除いてあげないといけないわけです。

 

口の発達が遅れる子が増加したと思われる原因

  1. 哺乳期の問題
  2. 離乳期の問題
  3. 幼児期の以降の問題

があげられる。

 

授乳方法がその後の口腔発達に及ぼす影響が2006年に報告されている

対象:2〜5歳児
方法:母乳保育、混合保育、人工保育の3群にアンケート
結果:18項目中6項目で母乳保育群が良好な発達を示した。

  • 咀嚼の上手下手
  • 前歯で噛み切る食べ物
  • 食べ物の吐出し
  • 食べこぼし
  • 食生活リズム
  • 食事の自立

幼児期における咀嚼に関する研究(1998)

  • 約1/3に硬いものがかめない、食べ物を口に溜めたり口から出す、よく噛まずに丸呑みするなどのトラブルがあった。
  • 年齢の小さい者、第1子、家庭で過ごす者に多かった。
  • 咀嚼にトラブルのある者はベビーフードの使用頻度が高く、現在やわらかい食事を与えられている者が多かった。

噛めない幼児の離乳期の育ちのタイプ

  • 母親が真面目几帳面で育児書を順守するタイプの一人っ子、もしくは第1子
  • 逆に自身がなくてベビーフードに依存するタイプ
  • 1歳過ぎても家庭でぼにゅうやミルクやお菓子のみ
  • 保護者が食事を作らない
  • 保護者が子供に関心がない

噛めない幼児に特徴的な食習慣

  • 柔らかい歯ごたえのないメニューしか貯めない
  • 食べられる食材(特に野菜)が少ない
  • 手づかみ食いをあまり経験していない
  • 食事中に飲み物を飲む
  • 食べられる果物が少ない

1歳でもなんでも食べられる幼児の特徴

  • 子沢山の家庭の下の子
  • 母親が煮物や具沢山の味噌汁をよく作る
  • 母親が(良い意味で)離乳食を作らない(成長に応じて親の食事の食べさせ方を買えるだけ)
  • 食事中に飲み物を飲まない
  • 離乳開始から手づかみ食べ(しゃぶり)をしている

幼児期以降の問題としてあげられるもの

  • 手軽で容易にカロリーのとれる加工食品の氾濫
  • 地域や家庭に固有の伝統色の衰退
  • いつまでも無くならない「おやつ=お菓子」文化
  • 不規則な生活習慣(夜更し、遅おき)
  • 食事中の飲み物摂取
  •  

最後に

離乳食は咀嚼のトレーニング時期で離乳食の目的は「離乳食を食べさせること」ではなき「離乳完了までに親と同じものが食べられるようになること」→難しい離乳食かららくらく離乳食へ
このことを理解した母親が「赤ちゃんが口にするからこそ自分たちの食べ物を省みなければならない」と自発的に気がつけるような環境が必要です。

 

市販の育児グッズとして離乳食キットやマグマグ、おしゃぶりなどがありますが、それらの落とし穴も考慮する必要があります。

うまく使うと便利な商品ですが、商業的な戦略の流れの商品が多く、一部の成長を見ていますが、成長と機能を考慮された製品は難しいです。

意外と舌の機能がうまく機能しないケースが多く、口の機能という意味では注意が必要です。

これらの製品とうまく付き合っていく必要は状態によって有効ですが、全てを依存するのは注意が必要です。

講演のすべての内容を記載しているわけでも、私自身が勉強中の身のためすべてを理解しているわけではありませんが、コメント欄に記載していただけると幸いです。

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この記事を書いた人

歯科大学卒業後、小児歯科を専攻として大学院を卒業し博士(歯学)号を取得。大学の小児歯科教室で教員を務めた後、地元で小児歯科を専門として開業しつつ、大学の非常勤講師(小児歯科)に任命中。小児歯科学会の認定医、専門医試験に合格して現在は専門医の資格を所有。小児歯科を専門とした歯科医師です。

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